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我が人生は物語と共に

映画や演劇の感想など。エンタメと文学をこよなく愛します。

『陥没』感想。笑いと涙の人生賛歌。

『キネマと恋人』(『キネマと恋人』感想。映画という夢を愛すること。 - 我が人生は物語と共に)が大変良かった、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん作。

これがまた良かったです……!


陥没


2017/3/5
@森ノ宮ピロティホール
13:00開演
M列上手ブロック



シアターコクーン・オンレパートリー2017+キューブ20th,2017 陥没 | シアターコクーン | Bunkamura

内容紹介

東京オリンピックに翻弄される人々を通して、
東京と昭和を照射するKERA待望の新作書き下ろし!

2009年の『東京月光魔曲』と2010年の『黴菌』で、昭和の東京をモチーフに作品を発表し、「昭和三部作」を目指したケラリーノ・サンドロヴィッチ。7年という時間を挟んで、いよいよ完結編となる3作目が誕生する!

2016年、読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞、芸術選奨文部科学大臣賞と大きな受賞が続く、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)の待望の新作書き下ろしです。

『東京月光魔曲』(2009年上演)、『黴菌』(2010年上演)と、昭和のそれぞれの時代の東京をモチーフとした前2作から7年の時を経て、2017年2月、第1回東京オリンピックを目前に控えた1963年頃の東京を舞台とした『陥没』が誕生する。わずかな年月で敗戦から復活を遂げたこの国が、輝かしい成果を世界に示す晴れの舞台となった東京オリンピック。道路の拡張と舗装、さまざまな向上心、野心、情熱、欲望が、工事の音ともに東京に渦巻き、一方、その時代、その場所に居合わせながら、なぜか時流に乗り遅れた人々もいただろう。この作品は、それでも捨て切れないオリンピックとの因縁に翻弄される人々の群像劇となる。2020年には第2回東京オリンピックが開催される東京。「あったかもしれないオリンピックの物語」を通して、昭和と東京、さらには、平成の東京オリンピックまでも照らし出すはずだ。 

スタッフ

作・演出: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
舞台監督: 福澤諭志

感想


※ネタバレあり




会場に着いたらもうDVD発売が決定していて、終演後の予約を受け付けていました。




芳雄さんにうたコンからお花がきてた!




ストプレは男性の観客も多いですね。
ミュージカルってなんであんなに女性ばかりなんだろ。









さて、『キネマと恋人』のケラさん演出なので、期待していた。

これがやっぱり非常に面白かった・・・!





悲喜劇だ。笑いと悲しみの混ざり合い。
悲しみはすぐ笑いへと転じる。そうやって進んでいく。
物語も、人生も。

人生賛歌の舞台だ。




上を向いて歩こう』の音楽で始まる。


照明によってセピア色になっている舞台。すぐに、これはいわゆる「プロローグ」で、過去の話なのだと分かる。


貞晴と瞳が、幸せな婚約者同士だった頃。


舞台となるホテルはまだ建設中。

このプロローグのラストで、瞳の父が亡くなってしまう。




オープニングクレジットがすごくかっこいい!
映画みたい。




しばらくは、物語がどう進むのか見えなかった。

プロローグで婚約者だった二人はすでに離婚し、瞳は再婚、貞晴も結婚を控えている。

瞳が父の後を継いで経営するホテルで、貞晴の婚約パーティーを開く。



群像劇なんだろうと思ったけれど、やはりこれは瞳と貞晴の物語だった。
本当はいまだ愛し合い、しかしお互い自分が選んでしまった道からもう抜け出すことはできなくなっている。
二人が再び共に人生を歩むことになる、そのドタバタな、また少しファンタジックさも交えた、そんな経緯。
そして彼らを取り囲む人々の物語も。



貞晴の母、鳩がこう言う場面がある。
「貞晴は、正しいチョイスをしたのでしょうか?」
人間は、人生で数えきれない選択をする。選択をせずに生きることはできない。
様々な選択を経て、ここにいる。

貞晴と瞳は、自分たちが間違った選択をしたと気がついている。離婚、そして別の人間との再婚。
間違えたと気がついていても、そうとは認めない、認めたくはない。自分たちは正しい選択をしたのだと思い込もうとしている。


そのまま進んでしまう未来もあったろう。
が、様々なとんでもない出来事により状況は二転三転し、二人は再び共に歩むことになる。



貞晴への思いを語る瞳。
ひとつひとつは何気ないことばかり、でもあまりにも愛に溢れていて、泣けてしまう。


瞳につきまとう大門を殴った貞晴。
隠していた愛情が溢れた瞬間。





最後のBGMは、『見上げてごらん夜の星を』。
歌はなしだが、私は歌詞が頭に浮かんで、舞台上の二人とあまりに重なって、感動する。

見上げてごらん 夜の星を
小さな星の 小さな光が
ささやかな幸せを歌ってる

見上げてごらん 夜の星を
僕らのように 名もない星が
ささやかな幸せを祈ってる

このBGMの中、舞台上にいるのは三人だけ。
貞晴、瞳、貞晴の弟の清晴。
清晴は眠っている。
貞晴は、瞳に語り続ける。
「映画に行こう」「旅行へ行こう」「宇宙旅行も当然になってるだろうな」
緊張したような、上ずった様子で話し続ける貞晴に対し、言葉少なに、でもはっきりと相槌を打っている瞳。
決して貞晴は「結婚しよう」とは言わない。
しかし彼の語る言葉の数々は、「これからの人生を共に歩もう」ということ。
そして日本の未来、自分たちの未来への高まる希望。


清晴が目を覚ます。
いつの間にか黙りこくっていた瞳を、観客からは背中しか見えない瞳を見て言う。
「なんで泣いてるの?」


なんでだろう。きっと、安堵したからだ。幸せでいっぱいだからだ。
あまりにも暖かい気持ちで溢れているからだ。


観客も、私もそうだった。
あまりに感動して、号泣寸前だった。


結局この舞台は人生賛歌であり、この元夫婦が、お互いの、自分たちの居場所を取り戻すための物語であった。








舞台自体は、貞晴と瞳以外の人物もしっかり描かれており、皆とてもキャラが立っている。
群像劇の要素も強い。



主演コンビ井上芳雄さんと小池栄子さん、とても良かった。
二人の空気感がよく合っていて、しっくりくる。それぞれ再婚相手との空気の合わなさが、対照的に際立っていた。



貞晴の婚約者、結は、どこか危うい感じのする少女。
最初は意地悪さを感じたけれど、見ているとむしろ危うさの方が強く感じてくる。
松岡茉優ちゃんは好きな女優さん。今回も上手かったのだけれど、他のキャストに比べて声の通りがイマイチだったのが少し残念。



今回驚いたのが瀬戸康史
この人あまり演技が上手いと思ったことがなかった。
が、この清晴。非常に良かった。とてもハマっている。
純粋さ、真っ直ぐさ。下手したら多少はウザく感じてしまいそうなキャラクターを、瀬戸はものすごく愛らしく演じた。愛さずにはいられない、皆に愛される清晴。
大好きなキャラクター。
貞晴との兄弟愛にも感動した。清晴は兄を信頼しきっているし、貞晴は弟をすごく、すごく可愛がって、愛している。
そして母も。この親子三人は、とても良い家族関係だと思った。



最初「このキャラ少しきもいぞ・・・」とおもった山中淳さん、結局は一途で一生懸命で、最終的には好感度高くなる役得ポジション。


犬山イヌコさん演じる鳩さんは愛らしい。


生瀬さんは・・・相変わらずアクが強い。
今回もしょーもない人間を全力で演じ切ってくださって。本当に上手いなぁ。


近藤公園さんは名前だけ存じ上げていたのですけど、私の好きなタイプの演技かも。
今作のキャラは、明るく、人当たりの良い人。一見、そう見える。が、実は毒がある。腹黒そうというか。


『キネマと恋人』では主演だった緒川たまきさん。
今回は笑い担当。最高に面白い、この人の独特のテンポ。






今作は悲劇的な展開もありつつ、笑いに溢れている。
すごくよく笑った。
どの人もこの人も、またどんな場面でも笑わせてくる。
笑いって難しいと思うのだけれど、くどくなく、本当に面白かった。





笑いの余韻に浸りつつ、ラストではあまりに感動して。

最高の作品でした。





DVDは予約はして帰らなかったのですが、絶対買おうと思います。











舞台『戸惑いの惑星』感想

どうしても観たくなって前日の当日券にチャレンジ。
当日券は取れず、キャンセル待ちでしたが、奇跡的に観ることが出来ました。ありがとうございました。

『戸惑いの惑星』


2017/2/26 18:00開演
@梅田芸術劇場シアタードラマシティ
16列



坂本昌行、長野博、井ノ原快彦のTTT「戸惑いの惑星」公式



内容紹介

ボクらはこの惑星で、永遠を奏でる。

不意に手渡された一通の手紙。そこには不思議な質問が記されていた。
深く遥かな、心の奥を探るような問いかけ。そこから、この舞台の「旅」は始まる。

三池(坂本昌行)は画家をめざした。
由利(長野博)は子ども時代に目にした「奇跡」を研究しようとした。
長谷川(井ノ原快彦)は作家を志した。
せちがらいこの世の中に抗うように、「夢」を追い続けた3人の男たち。
けれど終わりなき闘いは、彼らを少しずつすり減らしていく。

そんな時に訪れた突然の再会。
そこには懐かしいメロディが流れていた。
あふれ出し溯っていく記憶は、大きなうねりとなってほとばしり
その流れの中にはそれぞれにとって大切な女性の姿があった。
よみがえる甘く切ない痛み、恋の想い出。

メロディはさらに3人が心にフタをしていた様々な想いを呼び起こしていく。
叶わなかった夢、取り戻さなければいけない大切なもの。
混乱しながら時空の狭間を彷徨う3人を、「現在」へと連れ戻すのも、決して忘れることのできない、あのメロディだ。
思い通りにならなくても、つらくても、遠く離れてしまっても絶対に切り離すことのできない「本当の自分」に、3人は音楽に導かれ、再びめぐり合う。

スタッフ

作・演出: G2
ミュージシャン: 荻野清子、佐藤史朗、岸徹至、萱谷亮一



キャスト

坂本昌行
長野博
井ノ原快彦






感想


そもそもこの舞台に目を止めたのは、演出がG2さんだったからです。
嵐が丘』を観て感激して(堀北真希&山本耕史 舞台『嵐が丘』感想。正直素晴らしかったです。 - 我が人生は物語と共に)、この演出家の他の作品も観てみたい!と思って調べた時に出てきた新作が、このトニセンの『戸惑いの惑星』でした。
ただその時は、東京のみだと思ったので諦めていたんです。
それが後から大阪公演もあると知りましたが、当然チケットは手に入らず。最初から知ってても無理だったかも……。
どうしようかどうしようかと悩んで、でもやっぱり観たいので、当日券にチャレンジ。久しぶりにあんなに電話をかけまくりました。
キャンセル待ちで10番。これはもう無理かなと駄目元で行ってみたのですが、無事入れました。


結果、本当に観て良かった。
ものすごーく面白かったです。



もうどんな物語かと言われたら、なかなか説明しにくい。




まず導入から素晴らしい。
3人がそれぞれ自分自身、つまり坂本くん、長野くん、イノッチ自身として登場。
観劇にあたっての注意事項を述べ、一度引っ込むのかと思いきや、そのまま始まっている。


「戸惑ったこと」をテーマに、3人自身が話していく。
イノッチの物語にゾッとする。
「あなたは本当にあなた自身と言えるのか?」
背筋が凍った。
イノッチはイノッチじゃない。ハセッチ。長谷川だ。
そのまま彼らはすっとトニセンの3人ではなくなり、作中の人物へと姿を変える。
いや、もっと前からそうだったのか。境目が分からなくなる。どこまでがトニセンの3人で、どこからが作中の3人だったのか。
気がつけば本編は始まっている。


自分を自分と認識出来なくなる。
長谷川はそういった病気。




自分と他人、過去と未来、何もかもが不安定に感じて、自分の足場も見失いそうになる。


作中、何回も「怖い」と感じる場面があった。
ドキドキして、ここから逃げ出してしまいたい、と。
舞台を観ていてこんなことを思ったのは初めて。なんて物語なんだろう。





「曲」の謎を解き明かす過程の物語ではあるけれど、これは曲だけではなく、曲を巡る記憶と、それぞれの想いを思い出すことによって、自分自身を取り戻す物語なんだ。




「曲」に関してのオチは、正直ふーんという感じだった。
ただ、そのオチに至るまでの物語、そしてその描かれ方が本当に素晴らしくて、めくるめく世界、彼らの揺れる世界に取り込まれ、もう目を離すことが出来ない。




あの大量の伏線が回収されていく様。
冒頭の「戸惑ったこと」の語りは、イノッチの話だけではなく、坂本くんと長野くんの話も巧みに物語へと絡んでくる。




舞台の展開や演出が最高。非常に演劇的で、舞台でしかこういったものは見れないという印象。
何が何だか分からないままに伏線が回収されていく気持ち良さ。
しかしそれでも残る、腑に落ちない気持ちと、疑問。

観客に、委ねられているのだと思う。




最後の最後の結末。
長谷川が、自分のことを思い出す。
それは彼が自身を取り戻すということ。
三池と由利も、そこに至るまでの過程で、隠していた記憶を甦らせ、知らなかった事実を知り、彼ら自身を取り戻した。


これは、夢を追い続けた男たちの。
彼ら自身を、取り戻すための物語。
「本当の自分に、再びめぐり合う」ための物語。











三人の演技もとても良くて驚いた。


イノッチは『捜査一課9係』をシーズン1からずっと観ているので、彼の演技には馴染みがあった。
「純朴な青年」といった風がとても良く似合う。すごく純粋な感じ。優しい人。
自分を失っている青年の、どこか不安定な感じがよく出ていた。




坂本くんと長野くんは、演技は見たことなかった。多分。


長野くんが、面白い。
妙なコメディセンスがあるというか。
多分役柄としては真面目に言ってるのだけれど、俳優としては笑わそうとしているのか、それともやっぱり真面目に言ってるのかよく分からないところがたくさんあり。
真面目なのにどこか変な空気が出ていて。
ここは笑っていいものか……?と思いながら、込み上げてくる笑いを震えながら耐えていた場面がありました。(でも耐えられなかった)
あの空気感はすごい。独特のものがあるなーと思いました。




そして坂本くん。
あまりに演技が上手くて驚きました。
舞台にいっぱい出ているのは知っていたし、ミュージカル俳優として活躍しているらしいというのも知っていたけど、正直こんなに演技が上手い人だとは思ってなかった。
とにかく、ナチュラル。全然「演技」という感じがしない。全て自然に湧き出ている感情。
あまりにも感心して観てしまっていて、坂本くんの舞台を色々観てみたいなーと思った次第。






この作品は、トニセンの楽曲で構成されています。
と言って、ミュージカルかと言われれば違うような気もするけれど。
まあある歌手の曲だけを使ったミュージカル、というのは手法としては珍しくないですよね。
Green DayABBAなどありますし。有名どころ。

何曲か印象に残ったので、調べて聴いてみます。
トニセンのベストアルバム、ちょっと前に入手してるんですけど、あまり聴いてなかった。





そういえば楽器を吹きますね、三人とも。
楽器までするのかー!と思いましたが、腕の方はまあ……普通です(笑)
たまにちょっと大丈夫かな!?となりましたが、まあこんなもんですよね。
下手ではないし。



あと歌ですが………上手い方だと思いますけど、ただ引っかかっていたことが。あれ、坂本くんってもっと上手いよね?
あまり全力ではいかなかったのかな?
ところでイノッチの声って芯がありますねー。







大層面白い作品に出会えて幸せです。
これDVDとかなったら嬉しいな。買う。






ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』感想

『ロミオ&ジュリエット』


2017/2/26 12:30開演
@梅田芸術劇場メインホール
S席 9列


ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

スタッフ

原作: ウィリアム・シェイクスピア
作: ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出: 小池修一郎
舞台監督: 小林清隆



キャスト

ロミオ: 大野拓朗
ジュリエット: 木下晴香
ベンヴォーリオ: 矢崎広
マキューシオ: 小野賢章
ティボルト: 渡辺大
死: 大貫勇輔
キャピュレット夫人: 香寿たつき
乳母: シルビア・グラブ
ロレンス神父: 坂元健児
モンタギュー卿: 阿部裕
モンタギュー夫人: 秋園美緒
パリス: 川久保拓司
ヴェローナ大公: 岸祐二
キャピュレット卿: 岡幸二郎



作品紹介

キャピュレット家とモンタギュー家が代々憎しみ合い、争いを続けてきたイタリアの街・ヴェローナ
治まらない両家の争いに苦悩したヴェローナ大公は「今後、争いごとを起こした者を処する」と言い渡す。
大人たちの確執とは無縁の両家の子供達、ロミオとジュリエット
ふたりはそれぞれ未来の大恋愛を夢見ている。
ある日、キャピュレット家ではひとり娘のジュリエットに、大富豪パリス伯爵を求婚者として紹介しようと舞踏会を開催。そこへ、モンタギュー家のひとり息子ロミオが友人のベンヴォーリオ、マーキューシオと共に忍び込む。その舞踏会で、ロミオ&ジュリエットは運命的な出会いをはたし、一目惚れの恋に落ちた。
舞踏会にモンタギュー家の侵入者がいることに気付いたティボルト(ジュリエットの従兄弟)。
ティボルトの介入で、お互いが敵対する家の者だと知り、ショックを受ける。
しかし気持ちをおさえきれないふたりは、密かにジュリエットの部屋のバルコニーで永遠の愛を誓い合う。
ふたりの強い気持ちに心打たれたロレンス神父は、この結婚が憎みあう両家の和解に繋がるかもしれないと考え、密かにふたりの結婚式を執り行う。
そんな矢先、両家の若者の間でいさかいが勃発。
ロミオは仲裁に入るが、親友のマーキューシオがティボルトに刺され、親友の死を目の当たりにしたロミオは逆上し、ティボルトを殺してしまう。真昼の街中で起きた惨劇は、瞬く間に人々に知れ渡り、ロミオはヴェローナから永久追放されるがジュリエットの乳母の計らいで、夜が明けるまでのつかの間の時間、結婚初夜を過ごすことができる。
ひばりが鳴くころジュリエットに別れを告げ、ロミオはヴェローナを後にマントヴァへ向かう。
ふたりの結婚の事実を知ったキャピュレット卿は、ジュリエットとパリス伯爵をすぐに結婚させてしまおうと企てる。
その事を知ったジュリエットは、ロレンス神父に救いを求めに行く。
打ちひしがれるジュリエットをみかねたロレンス神父は、仮死状態になる薬をジュリエットに渡し、眠りから覚める前にロミオを霊廟に向かわせるという策略を企てる。しかし、ロレンス神父からの計画の知らせはロミオの元には届かなかった…。
親友のベンヴォーリオから、ジュリエットの死を聞かされたロミオは、ジュリエットの居るヴェローナへと急ぐ。
愛する人の横たわる姿を目の前に苦悩するロミオ。
ロミオはジュリエットに最後の愛の言葉を告げ、死の世界での再会を約束し、毒薬を飲んで自ら命を絶つ。仮死状態から目覚めたジュリエット。隣には、冷たくなったロミオが横たわる。 息絶えたロミオを目撃したジュリエットもまた、彼なしでは生きていけないと自らの命を絶つ。冷たくなったふたりを前に事の結末を信じられない、ロレンス神父。
両家の対立が招いた悲劇。
罪びととなってしまった両家の人々。
死の世界で結ばれたふたりを前に、争いの「醜さ・むなしさ」を知る。
両家の人々は永い争いに終止符を打ち、手と手を取り合う。
ふたりの真実の愛は、固く閉ざされていた両家の人々の心を動かしたのだ……。

感想

実質6列目ですごく近かった!けど見やすい、良席でした。


この回は、記録用カメラが入っていました。








まず第一に。私は小池修一郎の演出とはあまり相性が良くないです。
ので、今作も個人的に期待はあまりしていなかった。

で、予想通り、どうも好みからはちょっと外れる……。
これ最高!とはならないし、私のツボを突いてくることもない。
なんというか、良いとは思うけど、琴線に触れないんですよね……。


まあそれでも、割と良かったです。



ロミオとジュリエットという作品に対する知識は、映画新旧二作、それからケネス・ブラナーによる舞台、くらいですかね。
戯曲は読んだことない。
あ、ウエストサイド物語は観てます。映画。

それからこのミュージカルを観るのも初めて。
ウィーン版のCDは気に入っていて、愛聴しているけれど。







内容について

というわけで、まずは物語について。




何かしら大胆に改変してるのかなーと思いきや、けっこうそのまんまでした。



ただビックリ、凄かったのが、キャピュレット夫人の設定。
夫とは愛のない結婚をし、ジュリエットは実は夫との子ではなく愛人との子。
それを言っちゃう!?ジュリエット本人に言っちゃうの!?なんて母親だ……。

しかも、この母の現在の愛人は、ティボルトです。
これは……想像しちゃいますよね。ティボルトこそ、ジュリエットの実の父なのではないのかと。

年齢的に厳しいかもしれませんが、ティボルトが「初めて女を知ったのは15」らしいので、その相手がキャピュレット夫人だとしたら、現在ティボルトが31としたらありえるんじゃないの……?
ティボルトの年齢設定知りませんが。

しかしそうだとしたら、キャピュレット夫人とティボルトの関係はすごーく長いものとなるし。

さすがにこれはないかな……と思いつつも、こんな設定だとそういう風に深読みするでしょう!?

このキャピュレット夫人は、「母親」というより「女性」という感じですね。






現代(?)設定により生まれた違和感。
親の決める、愛のない結婚。
現代でそれ……?現代で?
今時親が無理やり決めるって……という違和感が拭えなかったのですが、名門の家はいつまでもそんなもんなんですかね…?
名家と触れる機会ないから分からない。





スマホとかは、まあいいんじゃないですか、別に。現代設定だし。

ただここでも一つ、我ながらしょーもないツッコミをしていたのですが……。
マキューシオ達がベンヴォーリオの「ロミオを探せ」メールを見た時の場面。そこで「既読」というセリフがあったのですよね。それで、あーこれはメールというよりLINEなのかな、と思ったのですが。

神父がジュリエットの仮死についてロミオにメールを送りますよね。
LINEで送ったんじゃないのかよ……!LINEなら既読にならなくておかしいって分かるでしょー!!!

と、そんなこと言ってても仕方ないのですが、変なツッコミが脳内から抜けませんでした。

まあそれで、神父がロミオ読んでないって気づいたら、ストーリー変わるし…(笑)







ウィーン版のCDが大好きなのですが、やっぱり曲はめちゃめちゃ良いです。
でもドイツ語で分からないまま聴いていたものが、ああこんな歌詞だったんだなと分かってスッキリ。(パート割りとかで判断する限り、少し違うとこもあるっぽいですが)

元々のシェイクスピアの名セリフはいくつか歌詞に織り込まれていて、それは嬉しかったです。
そんなの全然ないものと思っていたので。






あとダンスがカッコいい。
仮面舞踏会のシーンは煌びやかで、めくるめく輝きに飲み込まれて、とても良い。
というかダンスシーン多いですね!
ロックミュージカルって感じなのかな。






ダンサーの「死」の存在は、正直、見る前はこれいるの?って思ってたのですが、観てみたらこれが良かった。
非常に象徴的ですし、このなんとも言えない不安感を醸し出すのに成功。






私は、基本的に『ロミオとジュリエット』はジュリエットが主役だと思っています。
が、このミュージカルではどちらかと言えばロミオが主役という印象でした。








物語自体は基本に忠実に進んでいきますし、ラストには感動しました。




改めて、人間の愚かさをひしひしと感じましたね。
犠牲が出ないと分からないなんて。もっと早くみんな気が付いていれば。







作品としてはやっぱり古典通りのロミオとジュリエットが好きだなと思いましたが、これはこれで良いと思います。
曲は本当に好きだし。

今回観て改めてシェイクスピアの天才ぷりを実感しました。









キャラクターと役者について



現代だからかなんなのか、若者連中がその辺にいる不良集団っぽい印象を受けました。ヤンキーというか、ゴロツキというか。
特にマキューシオ達の側。
ただただ感情で突っ走る、子どもみたいな連中ばかり。
だから、マキューシオ達にはひたすらイライラしていました。全然感情移入できない。好きになれない。


それからマキューシオ達の衣装もあんまり好きじゃない。ティボルト側の方がカッコ良かったですね、好みとして。



ティボルトはさすがにマキューシオ達よりは大人でしたけど、やっぱり突っ走る。好きではない。可哀想といえば可哀想なんですけどね。



そのせいで、マキューシオとティボルト死んでも「自業自得だろ」という印象にしかならず、これは参りました……。


こんなに2人が好きじゃないの、初めてですよ……。



マキューシオとティボルトは本当にギラギラしていましたね。
しかし2人とも、役者さんはかなりハマっていた気がする。



特に渡辺さんなんて、歌声も「すごいティボルトっぽい」と思いましたよ。







若者達では唯一ロミオ、そしてベンヴォーリオは好きです。あ、ジュリエットも。



ベンヴォーリオは、割とマキューシオ寄りにやんちゃですが、でも実はマキューシオ達よりちゃんと冷静に物事を見ることができていて、ヤバイことはヤバイと分かっている。
これは取り返しのつかない不幸を招くとちゃんと気付いている。
見極めがはっきり出来ている人という印象ですね。
そして人の、友人の気持ちが、ちゃんと分かっている。
矢崎さんだし可愛らしい感じですが、それでもそういう点から、年齢的にはマキューシオ達より上だなと感じました。精神年齢と言うべきか。

マキューシオとロミオってかなり性格の違いを感じたのだけれど、そこにベンヴォーリオが架け橋のようになってると思いました。

また矢崎さんの演技がとても良くて。
前半のやんちゃさも可愛らしいですし、後半の哀しみをたたえた表情は逸品です。
哀しくてツラくて、でも自分がしっかりしないといけない。ロミオを守らないといけない。
やっぱりお兄ちゃんですね。

ベンヴォーリオにこんな好印象を抱いたのも初めて。

マキューシオに比べ、ベンヴォーリオはけっこうメイク薄めですね。
これは性格のキツさの違いが表れてるのかなぁと思いました。

ベンヴォーリオは出番も歌も多くて意外でした。
歌も良いですが、歌よりは演技の上手さをひしひしと感じていたところ、ソロ曲の「どうやって伝えよう」があまりにも素晴らしくて。
感情の乗せ方が上手すぎる。ベンヴォーリオの苦しみ、葛藤、無力さ、苦悩、そして決意が伝わってきて、震えました。
この時は、「俺(ベンヴォーリオ)と君(ロミオ)だけが生き残った」のですが、この後ロミオも死に、彼は一人きりになってしまうんだ……と思って聴いていて、余計哀しみが募りました。なんて辛い。たった一人生き残って。

矢崎さんの歌は、スカピンの時は「これ誰の声!?」という衝撃を受けたのですが、今回はその声から、聞きなれた矢崎さんの声に戻っていました。
役に合わせているのか、それとも……?
多少お疲れかな、と思う歌声もちょいちょいありましたが、演技も歌もとても良かったです。

このキャラクター性を見て、この役が矢崎さんになったことに納得しました。
可愛らしさと優しさとやんちゃさと、哀しみと。最高です。

以前このブログだかTwitterだかで、「弟的なポジションの演技が上手い」「リーダーとか、人の上に立つようなキャラだといまいち」って書いたような気がしないでもなくて、今もその印象は変わってないのですが、このベンヴォーリオのようなタイプのお兄さん感は、すごくハマってるというか上手かったなと思います。

あ、それからその矢崎さん。
カーテンコールで私の好感度が更に上昇しました。
カーテンコールで、皆がもう切り替えて笑顔の中、矢崎さんはずっと哀しそうなんですよ。「この人まだ泣いてるの?」って思っちゃう、本編のツラそうな感じをずーっと引きずってて。
大野くんが挨拶してる時、その大野くんの言葉で皆が軽いお辞儀というか会釈をしたのですが、矢崎さんはすごく深々とお辞儀していました。その時点で「えっ」とちょっとびっくりして。
そして幕が降りる時、皆が手を振る中、一人どこか宙を見つめている矢崎さん。幕がもう閉まるかな、という時、一人深々とお辞儀。というのを二回繰り返し、一番最後のカーテンコールでようやく少し笑みを浮かべ、小さく手を振っていました。
この人、かなり役にのめり込むタイプなんだな……。というか、相当ベンヴォーリオに入り込んでいたんだな。というのが分かりましたし、あのお辞儀からは礼儀正しさが溢れていて、わぁ、良い人だなぁとなんとなく感激してしまいました。
問答無用で好感度上がる。






ロミオは優しい。お坊っちゃんだな、と思います。
マキューシオと仲が良いのが不思議なくらい彼とキャラクター性が違いますが、幼い頃からの友人なのだから性格が違っても仲良くできるのかな。

大野くんはイケメンですね…!スタイルも良いし、滲み出るお坊ちゃん感と、歌声の柔らかさがとてもロミオに合っている。
とても優しそうな、王子様感がありました。




そして期待してた新人ジュリエット、木下晴香ちゃん。
とても可憐で、とにかく可愛らしい。
歌声も澄んでいて素敵。
ロミオとジュリエットのラブソングが、キュンキュンして、どれもこれも本当に2人が愛らしくて。
可憐な組み合わせだなと思いました。

私、ウィーン版を聴いていて「バルコニー」が大好きだったんです。
この2人のも、とても素敵でした。






しかしこのそれぞれのWキャストを見るに。写真とかでの雰囲気ですけど。
みんなぴったりの配役なんだろうな、と思います。
同じ役をそれぞれ見ていると、同じ役のキャストはどこかしら雰囲気が似ているように思いました。

馬場さんベンヴォーリオも見たかったです。矢崎さんより更にお兄さんっぽいイメージ。







大人たちは、モンタギューの夫婦はやや陰が薄い。大公も。
キャピュレットの夫婦は、先ほど言ったように母親があり得ないのですが(愛人うんぬんより、それを娘に言っちゃうのがあり得ないという個人的な憤慨)、父親の歌う「娘よ」には感動しました。娘への複雑な愛情。岡さん素晴らしい。全て分かっていて、娘のことを愛してるんだな……。
この曲により、娘に対する愛情を母親よりも強く感じました。





神父やジュリエットの乳母が好きです。

神父は坂元さんだからなのか、なんとなくコミカル。でも両家を案じている、2人を案じているのがよく分かる。


ジュリエットの乳母も、ジュリエットの一番の味方ですから。
だからこそジュリエットは、乳母に「伯爵と結婚しろ」と言われるのが一番ショックだったわけですが……。
でもこの乳母はジュリエットを誰よりも愛していて、この台詞も本当にジュリエットの未来を思ってこそ言ったという印象です。

ところでこのシルビアさんが美人なので、「綺麗は汚い」で、「どう考えてもこの乳母は綺麗でしょ!!」とか思いながら観てしまいました。

「あの子はあなたを愛している」も感動しました。
ジュリエットにはロミオのように親友はいないです。けれどもその代わりこの乳母、そして父親のソロ曲で、ああジュリエットも愛されているのだなぁと思って嬉しくなります。











ロミオ、ジュリエット共に愛してくれる人が側にいて、でもそれだけじゃ駄目なんですね。
友人や家族では代わりになれない、「恋人」に対しての愛を知ってしまって。
一度知った以上、もうそれを手放すことは出来ない。

きっと幸せになれたはずなのに、人間の愚かさがそれを悲劇へと変えてしまった。

哀しく美しい物語。












私が愛聴しているウィーン版CD↓

タイトルロールはLukas PermanとMarian Shaki。
大好きなMark Seibertはティボルトです。
Mathias Edenbornのベンヴォーリオも良くて……。
ぜひ聴いてみてください。