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我が人生は物語と共に

映画や演劇の感想など。エンタメと文学をこよなく愛します。

『岸辺の旅』

今日はミュージックステーション堂本剛くん出るし、夜には『メイズ・ランナー』を観るので、ネタには事欠かないんですが、映画観て帰ってきたらもう眠気に負けると思うので、今のうちにさっさと更新。


カンヌ国際映画祭が開催中です。
日本からはコンペティション部門是枝裕和監督『海街diary』、ある視点部門黒沢清監督『岸辺の旅』、河瀬直美監督『あん』が出品。

これらのうちの『岸辺の旅』、今月頭に小説を読んだばかり。私の中ではタイムリーです。
映画になってることは、ついこないだのカンヌに関する芸能ニュースを観るまで知らなかったんです……。


湯本香樹実は好きな作家です。と言っても全部読んでるわけではないですが。

有名な『夏の庭』が入り口、それから『春のオルガン』『ポプラの秋』『西日の町』を読みました。

上記の作品たち、読んだのは中学生くらいだと思うので、もう『夏の庭』以外はかなり記憶が薄れてますが、印象としては、どれも児童書のような感じ。児童書と言うと語弊があるかもしれませんが、子どもも読めて楽しめて、感動する。

それが、『岸辺の旅』は完全に大人向け。高校生くらいならともかく、小学生くらいで読んでも響かないかと。
そこに少し驚きました。こういう小説も書くんだ、と。

しかし読んでいて確かに、湯本さんの作品だなと思いました。
この方の書く文章は透明感があります。『岸辺の旅』ではさらにその透明感が増していたように思いました。
扱っているものの所為でしょうか。なんせ、"生者と死者"ですから。そこから生まれる空気感は特別なものです。

透明な、つかみ所のないものの中をふわふわと漂っているような、そんな印象。


テレビで映画の映像を少し観ました。
当然のことなのに、原作を読んで感じていた果てしもない透明感の所為で、実写化により生身の人間になっていたことに、なんとなく衝撃……。
主演は浅野忠信さんと深津絵里さんですね。
ほんの少しの映像だとなんとも言えないですが、原作の空気感がどこまで上手く映像化されているか。
多分観に行かないと思います、私。まあ気が向いたら映画の感想をいろいろ探して読んで、評判良いようなら観に行くorソフト化されてから観る、ということも考えてはいますが。



岸辺の旅 (文春文庫)

岸辺の旅 (文春文庫)



本文より印象的だった箇所。

"忘れてしまえばいいのだ 、一度死んだことも 、いつか死ぬことも 。何もかも忘れて 、今日を今日一日のためだけに使いきる 。そういう毎日を続けてゆくのだ 、ふたりで 。"

"水平線は常に目の高さにある 、そう教えてくれたのは父だ 。"

"でももしかしたら 、したかったのにできなかったことも 、してきたことと同じくらい人のたましいを形づくっているかもしれない 。この頃はそんなふうにも思う 。"

"「死者は断絶している 、生者が断絶しているように 。死者は繫がっている 、生者と 。生者が死者と繫がっているように 」"

"十五センチの隙間からもどかしく手を伸ばし 、その距離を守ることが互いを守ることだと思っていた 。"

"死んだ人のいない家はない 。"