我が人生は物語と共に

映画や演劇の感想など。エンタメと文学をこよなく愛します。

美しく強い精神に触れる。『ふたつの名前を持つ少年』

『ふたつの名前を持つ少年』"Run Boy Run"


2013年、ドイツ、フランス
監督: ペペ・ダンカート
脚本: ハインリッヒ・ハッディング
原作: ウーリー・オルレブ『走れ、走って逃げろ』
出演: アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ、エリザベス・デューダ、ジャネット・ハイン、ライナー・ボック、イテー・ティラン


作品紹介

ユダヤ人強制居住区から逃れた幼い少年がたどる壮絶な運命を、実話に基づいて描いたドラマ。自身もユダヤ人収容所に入れられた経験を持つ児童文学作家ウーリー・オルレブの「走れ、走って逃げろ」をもとに、アカデミー短編実写賞の受賞歴を持つドイツのペペ・ダンカート監督が映画化。ポーランドユダヤ人強制居住区から脱走した8歳の少年スルリックは、森で行き倒れていたところをヤンチック夫人に救われる。スルリックの愛らしさや賢さに気づいた夫人は、彼が1人でも生きていけるよう「ポーランド人孤児ユレク」という架空の身の上を教え込む。寝床と食べ物を求めて農村の家を渡り歩くようになった少年は、生き別れた父との約束を胸に過酷な日々を生き抜いていく。(©映画.com)




感想

観ていて思い出したのは『戦火の馬』。
過酷な世界で、主人公がたまたま出会う、ほんの一時交差する、人々の優しさ。
普通の人の優しさと勇気が、ひとりの少年の命を繋いでいく。

ほんの幼い少年ユレクの強さに感服しながらも、ユレクを助ける周りの人々を見て、「人間を救う勇気を持つ人間もたくさんいるんだ」と救われる気持ちになった。
人間って、まだこんなにも優しい。

人間を殺すのも人間だし、救うのも人間。
なんで人間ってこんなに複雑な生き物なんだろうと。










ネタバレあり。





原作は既読です。

逃げ出す前のゲットーでのエピソードはまるっとカット。

残念だったのは、原作で好きだった、ドイツ兵士ヴェルナーとのエピソードがなかったこと。


ユレク…スルリックは、父と約束をする。何があっても生きること。父や母を忘れても、ユダヤ人であることは忘れないこと。

この父との約束の場面は回想として何回か出てきますが、どれも細切れ。それが映画のラストでやっと、全体のハッキリとした回想シーンが入ります。

逃げている時にたまたま再会した父と息子。父はスルリックを抱きしめ、約束しろと語りかける。そして、息子のために自分は隠れ場から飛び出して走っていく。その隙に、反対側から走って出ていくスルリック。父が撃たれている。銃声が聞こえてくる。泣きながらも、止まるわけにはいかない。走り続けるしかない。生きなくてはならない。

「約束」場面を全編に挟みつつ、全体はこうして映画のラストに持ってきたこの脚本&演出は、かなり良かったと思います。

父とのこの約束が、ユレクの「生きる」という意志を支えてくれた。
そして、家族はもういない。しかし少年は約束通り生き抜いた。

ボロボロになった家を見ながら、家族を、父との約束を、そして父との別れを思い出し、泣きじゃくる小さなユレクの姿に、胸を痛めずにはいられません。



少年は、父との約束を守り通しました。





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走れ、走って逃げろ (岩波少年文庫)

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