我が人生は物語と共に

映画や演劇の感想など。エンタメと文学をこよなく愛します。

人間を抉り出す『嵐が丘』

中学生くらいから?母に勧められていた『嵐が丘』を読了。
これ子どもの時読んでも面白くなかったのでは……。
今読めて良かったです。本当に素晴らしい。傑作。


今回私が読んだのはこちらの古典新訳文庫。

嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫)

嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫)

嵐が丘〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

嵐が丘〈上〉 (光文社古典新訳文庫)


他の訳と比べてどう、とは言えないのですが、とても読みやすかったです。


簡単に感想を。



読む前のイメージとしては、ドロッドロで激烈な恋愛もの。
それもまあ間違ってはいない。
とても激しい……愛の物語。
でも間違ってはいないけど、そう言うと違うような気がする。
恋愛物語とくくると、メロドラマっぽく感じるから?


嵐が丘』は単なる恋愛物語ではない、もっと深く人の精神を捉え、抉った物語。だから人間の醜いところをたくさん見せられる。


愛情は美しいというよりとにかく激しい、けれども真っ直ぐで、ヒースクリフとキャサリンには愛情を超えた愛情がある。二人は別の人間ではなく、子どもの時から一つであったような。
一人の人間が引き裂かれたから……。


愛情以上に嫉妬や計算が渦巻く世界。
キャサリンは自分の欲に正直だ。そんなキャサリンは好きにはなれないけど、一種の憧れを強く持った。こんなに自分の望むものに正直でいられたら……でもキャサリンも、結局は自分の決断でヒースクリフを手放したわけだけど。

ネリ ー 、あたしはヒ ースクリフなのよ ─ ─彼はいつでも 、どんなときにも 、あたしの心の中にいるの ─ ─べつによろこびではないわ 。あたし自身が自分にとっていつでもよろこびではないのと同じで 。そうではなくあたし自身なのよ ─ ─

とても印象に残ったこの箇所は、有名な部分らしい。
あたしはヒースクリフ。魂を切り離すことはできない。


「あなたを抱きしめていたいわ 」彼女は悲痛な声でつづけました 。 「あたしたちがどちらも死んでしまうまで !あなたがどんなに苦しんだって知らない 。あなたの苦しみなんか 、どうだっていいわ 。

この「あなたの苦しみなんかどうだっていい」、この愛の形に衝撃を受けた。




二人の愛は、他人から見たら一種の恐ろしさも醸し出している。
ある意味狂気的だったから。




ヒースクリフは極悪非道なのに、最後までどうしても彼を憎み切ることはできなかった。
どうしてだろう。哀れだから?
語り手のネリーも、ヒースクリフを憎んでいるのと同時に一種の愛情があったように思う。
それは幼い頃からずっとずっと、彼の人生を見てきたから。
読者も同じ。




好きかどうかだったら、私はヘアトンが一番好き。
荒々しくても、誠実さと純粋さが伝わってきてたから。
キャシーに好かれようとしてる姿なんて、いじらしくて胸が痛い。
最後の彼の様子には涙が溢れた。




この荒涼とした物語がどんな結末を迎えるのだろうと思ったけれど、美しさと恐ろしさを併せ持った結末に、ああこの作品は完璧だ……と思った。