読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

我が人生は物語と共に

映画や演劇の感想など。エンタメと文学をこよなく愛します。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』感想

『ロミオ&ジュリエット』


2017/2/26 12:30開演
@梅田芸術劇場メインホール
S席 9列


ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

スタッフ

原作: ウィリアム・シェイクスピア
作: ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出: 小池修一郎
舞台監督: 小林清隆



キャスト

ロミオ: 大野拓朗
ジュリエット: 木下晴香
ベンヴォーリオ: 矢崎広
マキューシオ: 小野賢章
ティボルト: 渡辺大
死: 大貫勇輔
キャピュレット夫人: 香寿たつき
乳母: シルビア・グラブ
ロレンス神父: 坂元健児
モンタギュー卿: 阿部裕
モンタギュー夫人: 秋園美緒
パリス: 川久保拓司
ヴェローナ大公: 岸祐二
キャピュレット卿: 岡幸二郎



作品紹介

キャピュレット家とモンタギュー家が代々憎しみ合い、争いを続けてきたイタリアの街・ヴェローナ
治まらない両家の争いに苦悩したヴェローナ大公は「今後、争いごとを起こした者を処する」と言い渡す。
大人たちの確執とは無縁の両家の子供達、ロミオとジュリエット
ふたりはそれぞれ未来の大恋愛を夢見ている。
ある日、キャピュレット家ではひとり娘のジュリエットに、大富豪パリス伯爵を求婚者として紹介しようと舞踏会を開催。そこへ、モンタギュー家のひとり息子ロミオが友人のベンヴォーリオ、マーキューシオと共に忍び込む。その舞踏会で、ロミオ&ジュリエットは運命的な出会いをはたし、一目惚れの恋に落ちた。
舞踏会にモンタギュー家の侵入者がいることに気付いたティボルト(ジュリエットの従兄弟)。
ティボルトの介入で、お互いが敵対する家の者だと知り、ショックを受ける。
しかし気持ちをおさえきれないふたりは、密かにジュリエットの部屋のバルコニーで永遠の愛を誓い合う。
ふたりの強い気持ちに心打たれたロレンス神父は、この結婚が憎みあう両家の和解に繋がるかもしれないと考え、密かにふたりの結婚式を執り行う。
そんな矢先、両家の若者の間でいさかいが勃発。
ロミオは仲裁に入るが、親友のマーキューシオがティボルトに刺され、親友の死を目の当たりにしたロミオは逆上し、ティボルトを殺してしまう。真昼の街中で起きた惨劇は、瞬く間に人々に知れ渡り、ロミオはヴェローナから永久追放されるがジュリエットの乳母の計らいで、夜が明けるまでのつかの間の時間、結婚初夜を過ごすことができる。
ひばりが鳴くころジュリエットに別れを告げ、ロミオはヴェローナを後にマントヴァへ向かう。
ふたりの結婚の事実を知ったキャピュレット卿は、ジュリエットとパリス伯爵をすぐに結婚させてしまおうと企てる。
その事を知ったジュリエットは、ロレンス神父に救いを求めに行く。
打ちひしがれるジュリエットをみかねたロレンス神父は、仮死状態になる薬をジュリエットに渡し、眠りから覚める前にロミオを霊廟に向かわせるという策略を企てる。しかし、ロレンス神父からの計画の知らせはロミオの元には届かなかった…。
親友のベンヴォーリオから、ジュリエットの死を聞かされたロミオは、ジュリエットの居るヴェローナへと急ぐ。
愛する人の横たわる姿を目の前に苦悩するロミオ。
ロミオはジュリエットに最後の愛の言葉を告げ、死の世界での再会を約束し、毒薬を飲んで自ら命を絶つ。仮死状態から目覚めたジュリエット。隣には、冷たくなったロミオが横たわる。 息絶えたロミオを目撃したジュリエットもまた、彼なしでは生きていけないと自らの命を絶つ。冷たくなったふたりを前に事の結末を信じられない、ロレンス神父。
両家の対立が招いた悲劇。
罪びととなってしまった両家の人々。
死の世界で結ばれたふたりを前に、争いの「醜さ・むなしさ」を知る。
両家の人々は永い争いに終止符を打ち、手と手を取り合う。
ふたりの真実の愛は、固く閉ざされていた両家の人々の心を動かしたのだ……。

感想

実質6列目ですごく近かった!けど見やすい、良席でした。


この回は、記録用カメラが入っていました。








まず第一に。私は小池修一郎の演出とはあまり相性が良くないです。
ので、今作も個人的に期待はあまりしていなかった。

で、予想通り、どうも好みからはちょっと外れる……。
これ最高!とはならないし、私のツボを突いてくることもない。
なんというか、良いとは思うけど、琴線に触れないんですよね……。


まあそれでも、割と良かったです。



ロミオとジュリエットという作品に対する知識は、映画新旧二作、それからケネス・ブラナーによる舞台、くらいですかね。
戯曲は読んだことない。
あ、ウエストサイド物語は観てます。映画。

それからこのミュージカルを観るのも初めて。
ウィーン版のCDは気に入っていて、愛聴しているけれど。







内容について

というわけで、まずは物語について。




何かしら大胆に改変してるのかなーと思いきや、けっこうそのまんまでした。



ただビックリ、凄かったのが、キャピュレット夫人の設定。
夫とは愛のない結婚をし、ジュリエットは実は夫との子ではなく愛人との子。
それを言っちゃう!?ジュリエット本人に言っちゃうの!?なんて母親だ……。

しかも、この母の現在の愛人は、ティボルトです。
これは……想像しちゃいますよね。ティボルトこそ、ジュリエットの実の父なのではないのかと。

年齢的に厳しいかもしれませんが、ティボルトが「初めて女を知ったのは15」らしいので、その相手がキャピュレット夫人だとしたら、現在ティボルトが31としたらありえるんじゃないの……?
ティボルトの年齢設定知りませんが。

しかしそうだとしたら、キャピュレット夫人とティボルトの関係はすごーく長いものとなるし。

さすがにこれはないかな……と思いつつも、こんな設定だとそういう風に深読みするでしょう!?

このキャピュレット夫人は、「母親」というより「女性」という感じですね。






現代(?)設定により生まれた違和感。
親の決める、愛のない結婚。
現代でそれ……?現代で?
今時親が無理やり決めるって……という違和感が拭えなかったのですが、名門の家はいつまでもそんなもんなんですかね…?
名家と触れる機会ないから分からない。





スマホとかは、まあいいんじゃないですか、別に。現代設定だし。

ただここでも一つ、我ながらしょーもないツッコミをしていたのですが……。
マキューシオ達がベンヴォーリオの「ロミオを探せ」メールを見た時の場面。そこで「既読」というセリフがあったのですよね。それで、あーこれはメールというよりLINEなのかな、と思ったのですが。

神父がジュリエットの仮死についてロミオにメールを送りますよね。
LINEで送ったんじゃないのかよ……!LINEなら既読にならなくておかしいって分かるでしょー!!!

と、そんなこと言ってても仕方ないのですが、変なツッコミが脳内から抜けませんでした。

まあそれで、神父がロミオ読んでないって気づいたら、ストーリー変わるし…(笑)







ウィーン版のCDが大好きなのですが、やっぱり曲はめちゃめちゃ良いです。
でもドイツ語で分からないまま聴いていたものが、ああこんな歌詞だったんだなと分かってスッキリ。(パート割りとかで判断する限り、少し違うとこもあるっぽいですが)

元々のシェイクスピアの名セリフはいくつか歌詞に織り込まれていて、それは嬉しかったです。
そんなの全然ないものと思っていたので。






あとダンスがカッコいい。
仮面舞踏会のシーンは煌びやかで、めくるめく輝きに飲み込まれて、とても良い。
というかダンスシーン多いですね!
ロックミュージカルって感じなのかな。






ダンサーの「死」の存在は、正直、見る前はこれいるの?って思ってたのですが、観てみたらこれが良かった。
非常に象徴的ですし、このなんとも言えない不安感を醸し出すのに成功。






私は、基本的に『ロミオとジュリエット』はジュリエットが主役だと思っています。
が、このミュージカルではどちらかと言えばロミオが主役という印象でした。








物語自体は基本に忠実に進んでいきますし、ラストには感動しました。




改めて、人間の愚かさをひしひしと感じましたね。
犠牲が出ないと分からないなんて。もっと早くみんな気が付いていれば。







作品としてはやっぱり古典通りのロミオとジュリエットが好きだなと思いましたが、これはこれで良いと思います。
曲は本当に好きだし。

今回観て改めてシェイクスピアの天才ぷりを実感しました。









キャラクターと役者について



現代だからかなんなのか、若者連中がその辺にいる不良集団っぽい印象を受けました。ヤンキーというか、ゴロツキというか。
特にマキューシオ達の側。
ただただ感情で突っ走る、子どもみたいな連中ばかり。
だから、マキューシオ達にはひたすらイライラしていました。全然感情移入できない。好きになれない。


それからマキューシオ達の衣装もあんまり好きじゃない。ティボルト側の方がカッコ良かったですね、好みとして。



ティボルトはさすがにマキューシオ達よりは大人でしたけど、やっぱり突っ走る。好きではない。可哀想といえば可哀想なんですけどね。



そのせいで、マキューシオとティボルト死んでも「自業自得だろ」という印象にしかならず、これは参りました……。


こんなに2人が好きじゃないの、初めてですよ……。



マキューシオとティボルトは本当にギラギラしていましたね。
しかし2人とも、役者さんはかなりハマっていた気がする。



特に渡辺さんなんて、歌声も「すごいティボルトっぽい」と思いましたよ。







若者達では唯一ロミオ、そしてベンヴォーリオは好きです。あ、ジュリエットも。



ベンヴォーリオは、割とマキューシオ寄りにやんちゃですが、でも実はマキューシオ達よりちゃんと冷静に物事を見ることができていて、ヤバイことはヤバイと分かっている。
これは取り返しのつかない不幸を招くとちゃんと気付いている。
見極めがはっきり出来ている人という印象ですね。
そして人の、友人の気持ちが、ちゃんと分かっている。
矢崎さんだし可愛らしい感じですが、それでもそういう点から、年齢的にはマキューシオ達より上だなと感じました。精神年齢と言うべきか。

マキューシオとロミオってかなり性格の違いを感じたのだけれど、そこにベンヴォーリオが架け橋のようになってると思いました。

また矢崎さんの演技がとても良くて。
前半のやんちゃさも可愛らしいですし、後半の哀しみをたたえた表情は逸品です。
哀しくてツラくて、でも自分がしっかりしないといけない。ロミオを守らないといけない。
やっぱりお兄ちゃんですね。

ベンヴォーリオにこんな好印象を抱いたのも初めて。

マキューシオに比べ、ベンヴォーリオはけっこうメイク薄めですね。
これは性格のキツさの違いが表れてるのかなぁと思いました。

ベンヴォーリオは出番も歌も多くて意外でした。
歌も良いですが、歌よりは演技の上手さをひしひしと感じていたところ、ソロ曲の「どうやって伝えよう」があまりにも素晴らしくて。
感情の乗せ方が上手すぎる。ベンヴォーリオの苦しみ、葛藤、無力さ、苦悩、そして決意が伝わってきて、震えました。
この時は、「俺(ベンヴォーリオ)と君(ロミオ)だけが生き残った」のですが、この後ロミオも死に、彼は一人きりになってしまうんだ……と思って聴いていて、余計哀しみが募りました。なんて辛い。たった一人生き残って。

矢崎さんの歌は、スカピンの時は「これ誰の声!?」という衝撃を受けたのですが、今回はその声から、聞きなれた矢崎さんの声に戻っていました。
役に合わせているのか、それとも……?
多少お疲れかな、と思う歌声もちょいちょいありましたが、演技も歌もとても良かったです。

このキャラクター性を見て、この役が矢崎さんになったことに納得しました。
可愛らしさと優しさとやんちゃさと、哀しみと。最高です。

以前このブログだかTwitterだかで、「弟的なポジションの演技が上手い」「リーダーとか、人の上に立つようなキャラだといまいち」って書いたような気がしないでもなくて、今もその印象は変わってないのですが、このベンヴォーリオのようなタイプのお兄さん感は、すごくハマってるというか上手かったなと思います。

あ、それからその矢崎さん。
カーテンコールで私の好感度が更に上昇しました。
カーテンコールで、皆がもう切り替えて笑顔の中、矢崎さんはずっと哀しそうなんですよ。「この人まだ泣いてるの?」って思っちゃう、本編のツラそうな感じをずーっと引きずってて。
大野くんが挨拶してる時、その大野くんの言葉で皆が軽いお辞儀というか会釈をしたのですが、矢崎さんはすごく深々とお辞儀していました。その時点で「えっ」とちょっとびっくりして。
そして幕が降りる時、皆が手を振る中、一人どこか宙を見つめている矢崎さん。幕がもう閉まるかな、という時、一人深々とお辞儀。というのを二回繰り返し、一番最後のカーテンコールでようやく少し笑みを浮かべ、小さく手を振っていました。
この人、かなり役にのめり込むタイプなんだな……。というか、相当ベンヴォーリオに入り込んでいたんだな。というのが分かりましたし、あのお辞儀からは礼儀正しさが溢れていて、わぁ、良い人だなぁとなんとなく感激してしまいました。
問答無用で好感度上がる。






ロミオは優しい。お坊っちゃんだな、と思います。
マキューシオと仲が良いのが不思議なくらい彼とキャラクター性が違いますが、幼い頃からの友人なのだから性格が違っても仲良くできるのかな。

大野くんはイケメンですね…!スタイルも良いし、滲み出るお坊ちゃん感と、歌声の柔らかさがとてもロミオに合っている。
とても優しそうな、王子様感がありました。




そして期待してた新人ジュリエット、木下晴香ちゃん。
とても可憐で、とにかく可愛らしい。
歌声も澄んでいて素敵。
ロミオとジュリエットのラブソングが、キュンキュンして、どれもこれも本当に2人が愛らしくて。
可憐な組み合わせだなと思いました。

私、ウィーン版を聴いていて「バルコニー」が大好きだったんです。
この2人のも、とても素敵でした。






しかしこのそれぞれのWキャストを見るに。写真とかでの雰囲気ですけど。
みんなぴったりの配役なんだろうな、と思います。
同じ役をそれぞれ見ていると、同じ役のキャストはどこかしら雰囲気が似ているように思いました。

馬場さんベンヴォーリオも見たかったです。矢崎さんより更にお兄さんっぽいイメージ。







大人たちは、モンタギューの夫婦はやや陰が薄い。大公も。
キャピュレットの夫婦は、先ほど言ったように母親があり得ないのですが(愛人うんぬんより、それを娘に言っちゃうのがあり得ないという個人的な憤慨)、父親の歌う「娘よ」には感動しました。娘への複雑な愛情。岡さん素晴らしい。全て分かっていて、娘のことを愛してるんだな……。
この曲により、娘に対する愛情を母親よりも強く感じました。





神父やジュリエットの乳母が好きです。

神父は坂元さんだからなのか、なんとなくコミカル。でも両家を案じている、2人を案じているのがよく分かる。


ジュリエットの乳母も、ジュリエットの一番の味方ですから。
だからこそジュリエットは、乳母に「伯爵と結婚しろ」と言われるのが一番ショックだったわけですが……。
でもこの乳母はジュリエットを誰よりも愛していて、この台詞も本当にジュリエットの未来を思ってこそ言ったという印象です。

ところでこのシルビアさんが美人なので、「綺麗は汚い」で、「どう考えてもこの乳母は綺麗でしょ!!」とか思いながら観てしまいました。

「あの子はあなたを愛している」も感動しました。
ジュリエットにはロミオのように親友はいないです。けれどもその代わりこの乳母、そして父親のソロ曲で、ああジュリエットも愛されているのだなぁと思って嬉しくなります。











ロミオ、ジュリエット共に愛してくれる人が側にいて、でもそれだけじゃ駄目なんですね。
友人や家族では代わりになれない、「恋人」に対しての愛を知ってしまって。
一度知った以上、もうそれを手放すことは出来ない。

きっと幸せになれたはずなのに、人間の愚かさがそれを悲劇へと変えてしまった。

哀しく美しい物語。












私が愛聴しているウィーン版CD↓

タイトルロールはLukas PermanとMarian Shaki。
大好きなMark Seibertはティボルトです。
Mathias Edenbornのベンヴォーリオも良くて……。
ぜひ聴いてみてください。