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我が人生は物語と共に

映画や演劇の感想など。エンタメと文学をこよなく愛します。

舞台『戸惑いの惑星』感想

どうしても観たくなって前日の当日券にチャレンジ。
当日券は取れず、キャンセル待ちでしたが、奇跡的に観ることが出来ました。ありがとうございました。

『戸惑いの惑星』


2017/2/26 18:00開演
@梅田芸術劇場シアタードラマシティ
16列



坂本昌行、長野博、井ノ原快彦のTTT「戸惑いの惑星」公式



内容紹介

ボクらはこの惑星で、永遠を奏でる。

不意に手渡された一通の手紙。そこには不思議な質問が記されていた。
深く遥かな、心の奥を探るような問いかけ。そこから、この舞台の「旅」は始まる。

三池(坂本昌行)は画家をめざした。
由利(長野博)は子ども時代に目にした「奇跡」を研究しようとした。
長谷川(井ノ原快彦)は作家を志した。
せちがらいこの世の中に抗うように、「夢」を追い続けた3人の男たち。
けれど終わりなき闘いは、彼らを少しずつすり減らしていく。

そんな時に訪れた突然の再会。
そこには懐かしいメロディが流れていた。
あふれ出し溯っていく記憶は、大きなうねりとなってほとばしり
その流れの中にはそれぞれにとって大切な女性の姿があった。
よみがえる甘く切ない痛み、恋の想い出。

メロディはさらに3人が心にフタをしていた様々な想いを呼び起こしていく。
叶わなかった夢、取り戻さなければいけない大切なもの。
混乱しながら時空の狭間を彷徨う3人を、「現在」へと連れ戻すのも、決して忘れることのできない、あのメロディだ。
思い通りにならなくても、つらくても、遠く離れてしまっても絶対に切り離すことのできない「本当の自分」に、3人は音楽に導かれ、再びめぐり合う。

スタッフ

作・演出: G2
ミュージシャン: 荻野清子、佐藤史朗、岸徹至、萱谷亮一



キャスト

坂本昌行
長野博
井ノ原快彦






感想


そもそもこの舞台に目を止めたのは、演出がG2さんだったからです。
嵐が丘』を観て感激して(堀北真希&山本耕史 舞台『嵐が丘』感想。正直素晴らしかったです。 - 我が人生は物語と共に)、この演出家の他の作品も観てみたい!と思って調べた時に出てきた新作が、このトニセンの『戸惑いの惑星』でした。
ただその時は、東京のみだと思ったので諦めていたんです。
それが後から大阪公演もあると知りましたが、当然チケットは手に入らず。最初から知ってても無理だったかも……。
どうしようかどうしようかと悩んで、でもやっぱり観たいので、当日券にチャレンジ。久しぶりにあんなに電話をかけまくりました。
キャンセル待ちで10番。これはもう無理かなと駄目元で行ってみたのですが、無事入れました。


結果、本当に観て良かった。
ものすごーく面白かったです。



もうどんな物語かと言われたら、なかなか説明しにくい。




まず導入から素晴らしい。
3人がそれぞれ自分自身、つまり坂本くん、長野くん、イノッチ自身として登場。
観劇にあたっての注意事項を述べ、一度引っ込むのかと思いきや、そのまま始まっている。


「戸惑ったこと」をテーマに、3人自身が話していく。
イノッチの物語にゾッとする。
「あなたは本当にあなた自身と言えるのか?」
背筋が凍った。
イノッチはイノッチじゃない。ハセッチ。長谷川だ。
そのまま彼らはすっとトニセンの3人ではなくなり、作中の人物へと姿を変える。
いや、もっと前からそうだったのか。境目が分からなくなる。どこまでがトニセンの3人で、どこからが作中の3人だったのか。
気がつけば本編は始まっている。


自分を自分と認識出来なくなる。
長谷川はそういった病気。




自分と他人、過去と未来、何もかもが不安定に感じて、自分の足場も見失いそうになる。


作中、何回も「怖い」と感じる場面があった。
ドキドキして、ここから逃げ出してしまいたい、と。
舞台を観ていてこんなことを思ったのは初めて。なんて物語なんだろう。





「曲」の謎を解き明かす過程の物語ではあるけれど、これは曲だけではなく、曲を巡る記憶と、それぞれの想いを思い出すことによって、自分自身を取り戻す物語なんだ。




「曲」に関してのオチは、正直ふーんという感じだった。
ただ、そのオチに至るまでの物語、そしてその描かれ方が本当に素晴らしくて、めくるめく世界、彼らの揺れる世界に取り込まれ、もう目を離すことが出来ない。




あの大量の伏線が回収されていく様。
冒頭の「戸惑ったこと」の語りは、イノッチの話だけではなく、坂本くんと長野くんの話も巧みに物語へと絡んでくる。




舞台の展開や演出が最高。非常に演劇的で、舞台でしかこういったものは見れないという印象。
何が何だか分からないままに伏線が回収されていく気持ち良さ。
しかしそれでも残る、腑に落ちない気持ちと、疑問。

観客に、委ねられているのだと思う。




最後の最後の結末。
長谷川が、自分のことを思い出す。
それは彼が自身を取り戻すということ。
三池と由利も、そこに至るまでの過程で、隠していた記憶を甦らせ、知らなかった事実を知り、彼ら自身を取り戻した。


これは、夢を追い続けた男たちの。
彼ら自身を、取り戻すための物語。
「本当の自分に、再びめぐり合う」ための物語。











三人の演技もとても良くて驚いた。


イノッチは『捜査一課9係』をシーズン1からずっと観ているので、彼の演技には馴染みがあった。
「純朴な青年」といった風がとても良く似合う。すごく純粋な感じ。優しい人。
自分を失っている青年の、どこか不安定な感じがよく出ていた。




坂本くんと長野くんは、演技は見たことなかった。多分。


長野くんが、面白い。
妙なコメディセンスがあるというか。
多分役柄としては真面目に言ってるのだけれど、俳優としては笑わそうとしているのか、それともやっぱり真面目に言ってるのかよく分からないところがたくさんあり。
真面目なのにどこか変な空気が出ていて。
ここは笑っていいものか……?と思いながら、込み上げてくる笑いを震えながら耐えていた場面がありました。(でも耐えられなかった)
あの空気感はすごい。独特のものがあるなーと思いました。




そして坂本くん。
あまりに演技が上手くて驚きました。
舞台にいっぱい出ているのは知っていたし、ミュージカル俳優として活躍しているらしいというのも知っていたけど、正直こんなに演技が上手い人だとは思ってなかった。
とにかく、ナチュラル。全然「演技」という感じがしない。全て自然に湧き出ている感情。
あまりにも感心して観てしまっていて、坂本くんの舞台を色々観てみたいなーと思った次第。






この作品は、トニセンの楽曲で構成されています。
と言って、ミュージカルかと言われれば違うような気もするけれど。
まあある歌手の曲だけを使ったミュージカル、というのは手法としては珍しくないですよね。
Green DayABBAなどありますし。有名どころ。

何曲か印象に残ったので、調べて聴いてみます。
トニセンのベストアルバム、ちょっと前に入手してるんですけど、あまり聴いてなかった。





そういえば楽器を吹きますね、三人とも。
楽器までするのかー!と思いましたが、腕の方はまあ……普通です(笑)
たまにちょっと大丈夫かな!?となりましたが、まあこんなもんですよね。
下手ではないし。



あと歌ですが………上手い方だと思いますけど、ただ引っかかっていたことが。あれ、坂本くんってもっと上手いよね?
あまり全力ではいかなかったのかな?
ところでイノッチの声って芯がありますねー。







大層面白い作品に出会えて幸せです。
これDVDとかなったら嬉しいな。買う。